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『キオク』が駆け巡る『キロク』。NAZUさんが写真を撮り続ける理由

「キオクが駆け巡るキロク」
NAZUさんがそう話した瞬間、今回のインタビューのテーマが見えた気がしました。

写真を撮る理由。
写真を残す理由。

それは、綺麗な一枚を残すためではなく、
その写真を見たときに、その日の記憶が一気によみがえるから。

NAZUさんがカメラを手にしたきっかけは、息子さんが3歳の頃でした。

友人がコンパクトデジタルカメラでお子さんを撮影している姿を見て、
「私も、ちゃんと残したい。」
そう思ったことが始まりだったそうです。

ちょうど桜の季節。
カメラを購入し、息子さんの写真を撮り始めました。
以来、河津桜が咲く頃になると、その場所を訪れ、毎年写真を残しています。

そんな中で、NAZUさんは息子さんにもおもちゃのカメラを持たせていたそうです。
「せーの」でお互いに写真を撮り合う。
撮る人と撮られる人ではなく、一緒に楽しむ時間。

そのうち息子さんは、NAZUさんのスマートフォンで写真を撮るようになり、その姿を見たご主人がキッズカメラをプレゼント。

今ではお出かけの前になると、自分からカメラを持ってくるのだとか。

親子で始まった写真の時間を紐解いていくと、そこには「キオク」が駆け巡る「キロク」という言葉につながる理由がありました。

フォトグラファーNAZUさんが大切にしていること

息子と、その周りの人たちを残すこと

NAZUさんが残したいのは、息子さんだけではありません。

周りにいる大切な人たちとの時間も、一緒に残したいと話してくれました。
息子さんだけを撮ることももちろんあります。
けれどNAZUさんが惹かれるのは、その子らしさが見える瞬間。

誰かと笑い合う姿や、手を繋ぐ姿。
人との関わりの中で生まれる表情に、より心を動かされるのだそうです。

毎年、桜の季節になると撮影している一枚があります。
それは、おじいちゃん、おばあちゃん、そして息子さんが一緒に過ごす時間を写した写真です。

手を繋いで歩く姿。
並んで笑う姿。
何気ない日常。

特別なポーズをお願いするわけではありません。

ただ、その瞬間が過ぎてしまわないように、NAZUさんは静かにシャッターを切り続けます。
この日も、息子さんは桜の下で元気よくジャンプ。
その2度と来ない瞬間を、連写で収めます。
きっと数年後に写真を見返したとき、思い出すのは桜の美しさだけではないはずです。

「この頃はこんなふうにじーじとばーばと手を繋いでいたな」
「おもいっきり、ジャンプしていたなぁ」

そんな記憶ごと、写真の中によみがえるのだと思います。

息子と、その周りの人たちを残すこと

NAZUさんにお気に入りの一枚を尋ねると、迷わず見せてくれたのが、息子さんが3歳の頃に撮影した鯉のぼりの写真でした。

大空を泳ぐ鯉のぼりの下で、ご主人が息子さんを高く持ち上げる。

まるで一緒に空を泳いでいるようなその姿は、今でも特別な一枚だそうです。

毎年同じように撮影しているけれど、
「この写真はなかなか超えられないんです。」
そう笑いながら話してくれました。

けれど、それは写真の出来栄えの話ではないのかもしれません。

今年の撮影では、ご主人が思わず 「重たいなぁ」とこぼしたそう。
3歳だった息子さんも、今では6歳。

当たり前のことだけれど、少しずつ大きくなっています。
以前は軽々と持ち上げられていた身体も、今では簡単ではありません。

それでも毎年同じ場所で、同じように写真を撮る。

変わらないように見える一枚の中には、確かに流れている時間がありました。
あの日の鯉のぼりは、もう撮れない。

けれど、その代わりに今年の鯉のぼりがある。

写真を見比べながら、そんな成長を感じられるのも、毎年残し続けているからこその楽しみなのかもしれません。

息子の「本来の姿」を残すこと

NAZUさんが写真を撮るときに大切にしているのは、息子さんの自然な姿を残すことです。

「こっちを見て」
「笑って」

そんな言葉で表情をつくることは、あまりありません。

代わりに交わされるのは、いつもの親子の会話。

ある日、息子さんにこんな声をかけたそうです。
「スキップできるようになったんやろ?」
すると息子さんは、少し誇らしそうに 「できるよー!」
とスキップを始める。

その瞬間、NAZUさんはシャッターを切り続けます。

その瞬間にしか見られない、息子さんらしさを残すために。

楽しそうな表情。
少し得意げな顔。

できるようになったことを伝えたい気持ち。

写真に写っているのはスキップをしている息子さんではなく、その奥にある息子さんの気持ちなのかもしれません。

同じ瞬間は二度と訪れません。

だからこそNAZUさんは、その日、その時、その瞬間にしか見られない姿を残したいと話してくれました。

綺麗に見える一枚よりも、その子らしさが写っている一枚。

NAZUさんが残したいのは、そんな写真なのかもしれません。
取材の最後に、私が印象に残っている写真について伺いました。

そこに写っていたのは、NAZUさんご家族にとって大切な場所。

その場所は、ご主人と付き合い始めた場所であり、プロポーズを受けた場所。そして、息子さんがお腹にいる頃にも訪れた場所だそうです。
家族になる前から、たくさんの思い出が重なる。

結婚してからも、節目のたびに訪れているといいます。

ふたりだった頃。
夫婦になった頃。
そして、息子さんが加わった今。

同じ景色を見ながら、少しずつ家族のかたちが変わっていく。

写真を見返すたびに、その時の景色や会話、胸の中にあった気持ちまで思い出されるのかもしれません。
話を聞いていて感じたのは、NAZUさんが残したいのは写真そのものではないということ。

河津桜の下で写真を撮りっこした春の日。
じーじとば一ばと手を繋いで歩いた時間。
鯉のぼりとともに成長してきた息子くんの姿。
「できるよ!」と誇らしげにスキップした瞬間。

写真は、その出来事を 忘れないためにあるのではなく、もう一度思い出すためにある。

だから NAZUさんの写真には、見返す度に『キオク』が駆け巡る『キロク』が残されているんだと思います。

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この記事を書いた人
Kaori Mitani
iedemo graphy Founder

高校卒業後、独学でグラフィックデザインを学び、デザイン制作を中心とした個人事業としてゼロから起業。その傍ら、8歳の頃から親しんできた写真の世界に改めて魅了され、本格的に向き合うようになる。現在は「想いを写す」フィルム写真家として活動中。